玄関のたたきに、やや大きいトランクが置きっぱなしになっている。[2007/12/22]
黒ビロードのカーテンは、ゆるやかに波をうって、少しずつ左右へ開きはじめた。[2008/03/02]
暗闇に目がなれてくると、後ろから一条の光が射しているので、両側にいくつもの黒い影が浮き上がってきて、かさばったいろいろなものの間にあけられた狭い通路を歩いているのだということがわかった。[2008/04/18]
空間はときどき凝固し、突如ざらついた微粒子になるー近づくと、山や、谷、風景全体が見えてくる。[2008/05/04]
「忘れません」[2008/05/12]
しかしすでにほとんど過去のものとなりかかった自分の愛を、長いこと窓をとざした部屋のような、いぶかしいものとしてしか思い浮かべられなかった。[2009/03/14]
川端康成「いいえ、なんにも」『掌の小説』新潮文庫、1989
中井英夫「虚無への供物」『中井英夫全集』創元ライブラリ、1996
フアン・ルルフォ「ペドロ・パラモ」岩波文庫、1992
ミシェル・ウェルベック「ある島の可能性」角川書店、2007
泉鏡花「外科室」角川文庫、1979
ムージル「愛の完成」岩波文庫、1987